以前、コミュニティ設計・コミュニティマーケティングについて参考になった本・事例や、コミュニティデザイン及びマーケティングの要点・設計ポイントで取り上げたように、ここ最近はコミュニティのデザインやマーケティングに関して会社のタスクとして調査しております。
今回は、コミュニティやファンづくりという観点で非常に参考になった書籍、「ファンベース:支持され、愛され、長く売れ続けるために」の書評および要約記事として、自分が特に刺さった部分を引用しつつ、感想をまとめたいと思います。
▼2021/12/30追記
・おすすめマーケティング本紹介記事
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「ファンベース:支持され、愛され、長く売れ続けるために」について
まず、本書「ファンベース:支持され、愛され、長く売れ続けるために」について、さらっと紹介いたします。
本書は、2018年2月6日につくま書房から発売された書籍で、電通出身・コミュニケーションディレクターである佐藤 尚之氏によって執筆されております。
自分はKindle版を読みましたが、ページ数も288ページと一般的な新書と同程度で、かつ読みやすいためすぐに読み終えてしまいます。
人口減少、超高齢化、超成熟市場、情報過多・供給過多などによって、新規顧客の獲得がどんどん困難になっているこの時代に必要な考え方である「ファンベース」を豊富な先進事例とともに解説してくれる良書です。コミュニティデザインに関わる方以外にも、企業におけるマーケティング活動に関わる方は必読書だと思います。
「顧客から支持され、愛され、長く売れ続けるために、どうすれば良いのか…?」「なぜ、いま既存顧客を重要視すべきなのか?」
それらについて知りたい方は、ぜひ本書を手にとって読んでみて下さい^^
書評・感想
本記事では、ファンベースの内容で、特に参考になった部分を引用しつつ、書評・感想を記載していきます。
ファンベースとは?
まず、そもそも「ファンベース」とはなんなのか?そちらについてまとめてみました。
ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンをベース(土台・基盤・支持母体)にして、中長期的に売上高や価値を上げていく考え方です。ファンベースの「ベース」という表現が特に重要で、売上を中長期的に支える「土台・基盤」のようなイメージがあります。
出典:「ファンベース」
「常連さん」と考えるとわかりやすいです。ファンベース施策とは、自分のお店の常連さんを大切にして、彼らのLTVを上げていく。くわえて、常連さんを新たに少しずつ作って増やしていく。この2つを地道にコツコツを行っていくこと。
ちなみに、ファンベースは、ファンから儲けようとするだけの「ファン・ビジネス」や「ファン・マーケティング」などとは別物です。
ベース・基盤という部分を大事にして、「ファンベース・プランニング」や「ファンベース・マーケティング」と呼んでも良い。
そもそもファンとは?
ファンベースの定義や意味はわかりましたが、そもそも「ファン」とはなんでしょうか?
ファンとは、企業やブランド、商品が大切にしている「価値」を支持している人、その「価値」にワクワクして喜んだり、友人に薦めてくれる人のことです。支持する価値は多種多様で、例えば、「このデザインがめっちゃ好き!」だったり「ここの社長のビジョンや考え方やがすごく共感できる!」だったり「こんな機能を求めていたんだ!」などがあります。
ファンベースをすべき時代背景と、現状のマーケティングの問題点
つぎに興味深かった点ですが、なぜファンベースをする必要があるのか?それは日本社会の状況が深く関わっていました。また、あわせて現在の広告やマーケティングについての問題点にも言及がされています。
1.ファンベースをすべき時代背景
・前提として、超高齢化、少子化、独身増加などによる人口急減で、新規顧客へのリーチや獲得が難しくなっています。
また、コホート分析とユーザー定着率の重要性についてでも解説したように、獲得したユーザーの継続率を高めること(つまり、ファンベースを構築していくこと)が非常に重要です。
2.現状のマーケティングの問題点
ネスカフェアンバサダーを立ち上げた津田氏も、モノやサービスを売るために、業界全体がリーチ広告一辺倒になっていることに対する危機感を持っているようです。
もちろん、新規顧客への広告プロモーションなどの短期施策や単発施策が無意味というわけではなく、リーチももちろん重要です。そもそもリーチして認知されなければファンにもならないし、何も始まらない。また、大々的なテレビCMなどのプロモーションをすることで、社員の誇りを掻き立てて、仕事のモチベーションが上がったり、会社の一体感を作ることができる効果があるため、もちろん無視できません。
ただ、問題なのは、「いかにリーチを増やすか?いかに獲得コストを下げて効率的にリーチするか?」ばかりに気を取られて、「じゃあ、リーチしたあとどうするの?」に考えが及んでないことが問題
3.本来あるべきマーケティングの姿
リーチ獲得が重要であることを認めた上で、それと同様かそれ以上に重要なことが、リーチして認知獲得したあとに、どうやって継続してもらい、どうやってファンになってもらい、最終的なLTV(ライフタイムバリュー)を上げていくのか?それらを事前に設計した上で、広告プロモーションによるリーチを増やすべきです。
つまり、全体構築が必要ということ。ファンに売上の大半を支えてもらいつつ、そこをベースにして短期的な広告施策で新規開拓をして新たなファンも増やしていく。というようなマーケティング全体の設計・構築をする必要がある。
なぜファンベースが重要なのか?
ファンベースが必要となっている時代背景や、現状のマーケティング業界の問題点・課題点については理解できました。それでは、なんでファンベース施策がビジネスにおいても重要なのでしょうか?
1.ファンは売上の大半を支えてくれて、伸ばしてくれる
「パレートの法則」や「20:80の法則」などと呼ばれる法則があるように、ビジネス分野では「全顧客数の上位20%が、売上高の80%をつくっている」ことが多いです。なので、自社の大半の売上を支えてくれる顧客=ファンを増やす「ファンベース」という考え方が重要となります。
まずは自社のビジネス数字を分析して、実際にパレートの法則が働いているか確認してみると良いです。
ちなみに、逆に言えば、「全員にファンになってもらおう」と思ってはいけません。それをすると、むしろ誰もファンになってくれなくなる。20%という少数の人に愛着を持ってもらうようにします。
2.時代的・社会的にファンを大切にする重要性が増した
先程述べた点と重複する話ですが、日本社会の変化によって人口が減少している(=商品を買ってくれる顧客数が減っている)。計算上では毎年100万人もの人口が減っていくペース。100万人都市とは、現在の千葉市や仙台市と同様の規模なので、毎年そういった都市がひとつずつなくなっていくペースです。
ほかにも、モノで溢れている超成熟市場であったり、情報過多といわれるような情報環境の変化により企業側のメッセージが消費者に届きづらくなってきています。
こういった時代背景もあって、新規顧客の開拓だけではなく、既存顧客に目を向けて、ファンを大切にする「ファンベース」が重要になってきています。
3.ファンが新たなファンを作ってくれる
前提として、価値観が近い人が愛用しているモノは、自分が愛用する可能性が高いです(「類友」=類は友を呼ぶ)。
また、人は自分が大好きなモノ、コトを人に教えたくてたまらない。つまり、ファンが周りの類友をファンにしてくれるのです。
ただし、もちろん勝手に広めてくれることはなく、オススメするためのキッカケを作るなどして言いたくなるような状況を作ることが大切です。
ファンをつくるための3つのポイント
1.その価値自体を上げる
ファンの自社や商品に対する「共感ポイント」を強化して、もともと大切にしている価値自体をアップさせる。
・ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
┗ファンミーティングなどで、実際のファンの生の声を聞く
・ファンであることに自信を持ってもらう
┗ファンは、「ファンであること」や「友人に薦めて良いのか」など自信をもてない。なので、意識的に自信を持ってもらえるようにする。
┗施策例1:他のファンのオーガニックな言葉を読んでもらう、有識者のコメントを読んでもらうと良い。自社サイトなどでも目立つ部分に掲載したり、SNSやブログに掲載したり、他のファンの投稿をSNSでシェアやリツイートしたりするのも基本。
┗施策例2:テレビCMなどのマス広告への露出も、ファンの自信や推薦しやすさにつながる効果的な施策。
・ファンを喜ばせる。新規顧客より優先する
┗新商品の案内をまずファン限定で先に公開したり。
2.その価値を代替できないものにする(愛着)
・商品にストーリーやドラマをまとわせる
┗ストーリーや誕生秘話などのドラマをあると、人は「愛着」を覚えやすい
・ファンとの接点を大切にして、改善する
┗ファンコミュニティをつくるなどして、ファンが気軽に参加して、想いを共有できる場を作ると良い
・ファンが参加できる場を増やし、活気づける
┗注意点としては「とりあえずファンコミュニティをつくろう」とならないようにする。まずはファンから慶長し、「自信を持ってもらうためのコンテンツ」や「商品開発ストーリー・裏話」などを整備することを先にやったほうが良い。
3.その価値の提供元の評価・評判を上げる(信頼)
・それは誠実なやりかたか、自分に問いかける
・本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
・社員の信頼を大切にして「最強のファン」にする
さいごに
以上で、「ファンベース:支持され、愛され、長く売れ続けるために」の書評・要約・感想記事は終わりとなりますが、いかがでしたか?
「顧客から支持され、愛され、長く売れ続けるために、どうすれば良いのか…?」「なぜ、いま既存顧客を重要視すべきなのか?」
それらについて知りたい方は、ぜひ本書を手にとって読んでみて下さい^^
合わせて、コミュニティデザインやコミュニティマーケティングにおいて参考になった本を以下に紹介します。