突然ですが、「理念とビジョン」の違いはなにか。
会社の経営層やマネージャーなどの方は、そんな疑問を一度は抱いたことがあると思います。
今回は、組織の代表やマネージャーを務めたり、戦略を考えている方なら誰しもが一度は考えたことがあるであろう、「理念」と「ビジョン」の違いについて解説していきます。
私は学生時代に仲間と一緒にWebサービスを運営したり、社会人になってからも経営戦略を考えるミッションの仕事に携わっていたので、経営理念と経営ビジョンの違いについては常々考える機会がありました。
先日の事業コンセプトとは?事例と作り方まで解説!でも紹介しましたが、
マンガ形式かつストーリー形式でこれらを考えていく時のおすすめ本「マンガでやさしくわかる事業計画書」を参考に、なるべく分かりやすい説明を心がけて解説していきます!
2018/9/25追記:ビジネスモデルキャンバスについてまとめました
ビジネスモデルキャンバスとは?事例や作り方
理念とビジョンの違い(意味や定義)
まずはじめに、「理念」と「ビジョン」について、その意味や定義を確認していきましょう。
結論から言うと、理念とビジョンの違いは以下のように整理できます。
一言でいうと、理念とビジョンの違いは上記のとおりです。
* 理念・・・会社や事業を運営していう上で「大事にしている価値観」でいつまでも不変
* ビジョン・・・会社や事業を運営する上で「目指す将来の姿」で時間経過によって変わる
つまり、「自分たちの価値観(理念)に基づいて、どんな未来を実現したい(ビジョン)のか?」ということです。まず最初に、理念を定義して、その上でビジョンを考えると、わかりやすいと思います。
ちなみに、「ミッション」や「戦略」という用語も、よく混同しがちですが、これらも全く別物なので注意してください。
* ミッション・・・使命や役割のこと。会社や組織の存在価値がどこにあるかを表している
* 戦略・・・ビジョン実現に向けて、どのように達成するのかという道筋を表したもの
それでは、理念およびビジョンについて、それぞれ、具体的に見ていきましょう!
理念の定義や意味
まずは、「経営理念」や「事業理念」などの形で用いられることの多い「理念」について、改めて確認していきます。
前述のとおり、理念とは会社や事業を運営していう上で「大事にしている価値観」でいつまでも不変のものです。
言い換えれば、「その会社や事業を通じて、どのように社会や人々の役に立ちたいのか?」という、その会社や事業を行う際に、ベースとなるものです。
企業理念はその会社を経営する時の価値観ですし、
事業理念はその事業を運営する時の価値観になります。
ここをしっかり定義できていないと、「利益を出すことが会社の目的だ!」となってしまい、
大切にしたい価値観(理念)よりも、売上や利益を重要視してしまう本末転倒なケースが出てしまいます。
(もちろん、存続するためにも利益は重要です)
極稀に、上場企業ですら不正行為をしていたことがニュースになりますが、
利益を重要視するあまり、もともと創業者が大切にしていたはずである
「どのように社会の役に立ちたいのか?」という価値観から外れてしまいます。
なので、ここでしっかりと理念を考え抜いて、
かつそれを組織内の仲間に継続的に伝え続けて、
全社員が理念を理解し、体現できることを目指してみてください。
名著「ビジョナリー・カンパニー」でも登場するようですが、
長く続く会社とそうではない会社で、違うものの1つとして「理念を大切にしているか」というデータもあります。
ビジョンの定義や意味
次に、ビジョンについて確認していきます。
前述の通り、ビジョンとは会社や事業を運営する上で「目指す将来の姿」で時間経過によって変わるものです。
理念と明確に異なる点は、「理念の考えを受けた上で、数年後にどのような姿になっていたいのか?」ということをビジョンでは表現します。
ここは混同しがちですが、非常に重要なので、気をつけてくださいね。
ちなみに、目指すビジョンが大きく壮大で、かつ実現への道筋が明確であるほど、
良い仲間や応援してくれる協力者が集まりやすい気がします。
(ただし、口だけになってもしょうがないので、達成までの道すじの説明も必要ですよ!)
さて、これまでで、理念およびビジョンについて意味や定義、それらの違いについて解説してきました。
ここまでの話を図解で整理すると、このようになります。
理念とビジョンの違い(事例)
理念とビジョンの違いについて定義や意味を理解できました。
次に、実際の企業はどのような理念やビジョンを掲げているのか、見ていきましょう。
ちなみに、自分も理念やビジョンを策定する際に、
色々な方の記事を参考にしましたが、理念とビジョンがまとまって紹介されている記事は多くありませんでした。
(ほとんどが、理念は理念、ビジョンはビジョンで、別々の会社の事例を紹介している)
そのため、今回は、特定の数社に絞って、理念とビジョンを一緒に確認していければと思います!
理念とビジョンの事例①:ランサーズ
クラウドソーシングのプラットフォームとして有名なランサーズさんの理念とビジョンの事例です。
●理念
時間と場所にとらわれない、新しい働き方をつくる
●ビジョン
テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる
理念は、2015年時点でのインタビュー記事を参考に、
ビジョンは、2018年時点でのコーポレートサイトを参考にしているので、若干タイムラグがあるかもしれませんが、
インタビュー記事も代表のものなので、信憑性はあるかなと思います。
理念とビジョンの事例②:ファーストリテイリング
UNIQLOやGUで有名なファーストリテイリングさんの理念とビジョンの事例です。
●理念
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
●ビジョン
服のチカラを、社会のチカラに。
理念もビジョンも、ともに2018年時点のコーポレートサイトを参考にしています。
価値観と目指す姿のきちんとした切れ目は無いようにも見えますが、世界の会社が掲げる理念&ビジョンとして紹介をしました。
理念とビジョンの事例③:ソフトバンク
次に、最近、投資会社の性格が強まりつつあるソフトバンクさんの事例です。
●理念
情報革命で人々を幸せに
●ビジョン
世界の人々から最も必要とされる企業グループ
理念もビジョンも、ともに2018年時点のコーポレートサイトを参考にしています。
こちらは、情報革命で人を幸せにするという価値観で、世界で最も必要とされる企業グループを目指すというわかりやすい理念&ビジョンだと思います。
以上で、実際の企業の事例を紹介してきました。
「理念」→「ビジョン」→「戦略」→「施策(戦術)」の階層構造を理解するための書籍として、戦略書ではありますが、以下が非常に参考になりますので、ぜひ読んでみてください。
それぞれの位置づけと、どのように一貫性を持たせるか、がわかりやすいです。
理念とビジョンの作り方
これまでで、理念とビジョンの違いから、実際の企業における事例まで紹介してきました。
ある程度イメージが湧いてきたと思いますので、最後に、実際に理念やビジョンを策定するとなった際にはどのようなポイントに気をつければよいのか?という作り方について紹介しておきます。
参考文献は、例によって「マンガでやさしくわかる事業計画書」です。
理念をつくる時のポイント
理念をつくるポイントは、2点あります。
原点回帰
まず、理念とは、「会社や事業をする上での価値観」になるため、創業者やリーダーの想いを乗せるべきです。
ポイントとしては、「そもそも、自分はどんなことをして、社会の役に立ちたいのか?」という会社や事業をする上で根本的なところを考え抜くことが必要になります。
基本的な言葉選び
また、理念は一旦設定したら、基本的にはめったに変更することはないため、
ある程度汎用的でベーシックな表現を選択すると良いです。
これらについては、先程の事例を見ても、ある程度抽象的な言葉で表現されていることが見て取れると思います。
ビジョンをつくる時のポイント
次に、ビジョンを設定のしかたは、3パターンあります。
どれが正解などはありませんが、
よく使われるのは、1つめの定量的な数字をいれて表現するパターンです。
定量的な目標で表現する
次に、定量的な目標を入れます。
数字を入れることで、覚えやすく、客観的な評価もしやすいというメリットがでます。
例えば「○○業界でシェアNo1になる」とか「5年後・売上10億円・利益2億円を目指す」などです。
将来像をキーワードで表現する
ビジョンを作る際には、短い言葉で将来像を表現します。
またよくあるのは、対外的な評価やポジションを使って表現します。
例えば、「○○のリーダーになる」とか「日本一の○○をつくる」などです。
達成イメージを感覚・感情で表現する
最後に、達成した時のイメージで表現するパターンです。
前述の2つは、あくまでも数字がメインになっているので、
達成したかは分かりやすいのですが、達成できたときのイメージがしづらいという欠点もあります。
そのため、イメージを感覚・感情で表現する手法も使われます。
例えば、「誰もが食べたことのあるレストランチェーンを作る」とか「みんな知ってる○○」などのような表現です。
まとめ
この記事では、
● 理念とビジョンの違い
● 実際の企業における理念とビジョンの事例
● 理念とビジョンのつくりかた
について紹介してきました。
いくつか記事の途中で参考文献も紹介してきましたが、
そちらも合わせて読むことで、より理解が深まり、洗練された理念やビジョン設定に近づけると思います。