【感想】スタンド・バイ・ミー|S・キング|ホラーの帝王が描く、青春小説の金字塔。【あらすじ・書評】

レビュー
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こんにちは。

S・キングと言えば、ホラー小説のまさに帝王的な作家です。

彼の作品は「シャイニング」「IT」や「アンダー・ザ・ドーム」など、映画化された作品も枚挙にいとまがありませんが、その中でも彼の自叙伝とも言える作品が、今回紹介する「スタンド・バイ・ミー」です。

個人的に好きな作品で、何回もみていますが、1980年代のアメリカが舞台になっている本作は、時代も場所も私たちと異なるのにとても感情移入できてしまう不思議な作品でもあります。

映画はこちら。

原作はこちらです。

それでは、行ってみましょう。

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あらすじ

作家のゴーディ氏は、ある日の新聞でクリス弁護士が殺害されたことを知りました。

クリス氏はゴーディ氏の子供の頃の親友で、ゴーディ氏は彼らの子供時代を回想します。

……時は彼らの少年時代。

書くことが好きなゴーディ、あまり良好ではない家庭環境で育ったクリス、軍人の父親のPTSDに困りながらも彼を尊敬するテディ、ぽっちゃりしていて気弱なバーンの4人は、ひょんなことから森の奥に死体があることを知り、探しに行く旅を始めます。

道中、野犬の声に怯えながら焚き火をしたり、くだらない話をしたり、ロリポップを歌ったり、不良に襲撃されたり、汽車に轢かれそうになったりと様々な経験をします。

その都度パニックになったり意外と冷静に対処したりと、ティーンエイジャーの独特な感受性が情緒豊かに描かれます。

激しい展開がある作品ではありません。

誰もが経験した少年・少女時代の繊細な心情と、当時の友人関係が永続するものではないことなど、心のどこかに対して郷愁を感じさせる、そんな作品です。

見どころと感想

ゴーディの人生

物語全体を回想している、いわば語り手としてのゴーディですが、彼は年の離れた兄を亡くしていました。

兄は人望が厚く、ゴーディをとても可愛がってくれていましたが、彼の亡き後は両親がゴーディに情をかけなくなり、彼の作家になる夢も諦め掛けていました。

そんなゴーディでしたが、旅の途中でクリスに文才を絶賛され、結果的に将来作家になっていることが物語冒頭で示されています。

自分の人生を大きく形づけたクリスとの出会いと、彼との別れ。

クリスの死を知ったゴーディの心情が明示されないところも、映画としての作りが丁寧で良いなあ、と感じました。

自分の人生に深く関わっていながら、疎遠になって久しい友人との関係として、単純な悲しみを表現するよりも納得のいく心理描写です。

クリスの人生

一方のクリスですが、彼は良好ではない家庭環境の中で、自分は進学することを諦めきっていながら、同じように家庭の中で評価されないゴーディの才能をしかし認め、ゴーディを激励する役回りです。

そして、クリス自身も将来弁護士になっており、4人が別々の人生を歩み出した中で相当な努力をしたことがうかがえ、少年なりの強い決意に健気さを感じて心揺さぶられます。

クリスは若くして亡くなりましたが、その生涯の中でまた真摯に誰かを鼓舞し、誰かの記憶に焼きつく存在となったでしょう。

原作者S・キングと4人の少年

原作者のS・キングは今でこそ全世界に知られた大作家ですが、幼児期には家庭環境を巡って色々と苦労をしてきた、という話はファンには有名な話です。

僕も彼の1ファンですが、彼がこの作品中で4人の少年全員に自身の少年時代を重ねているのは明白です。

兄との関係の中で家庭に居場所がなかったり、鼓舞してくれる友人を欲していたり、父親に対する、また自分の体型に対するコンプレックスを抱えていたり。

恐ろしいホラー小説を量産していますが、彼の人間関係に対する憧れが詰め込まれた作品のように感じました。

そんなことを感じながら観てみると、作品のみならずS・キングに対する愛おしさ、切なさを抱かずにはいられません。

ぜひ、読んで、観てみてください。

そして、タイトル「スタンド・バイ・ミー」の意味を感じ取ってください。

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