こんにちは。文系学生のLinです。
さて、『星の王子様』で有名なフランスの作家であり、パイロットでもあるサン=テグジュペリ。
今回は、彼の傑作の一つ、『人間の土地』を紹介します。
エッセイに分類される作品です。
筆者は、設備が貧しい時代(具体的には、20世紀前半)にパイロットとして、命の危険と隣り合わせながら人類に寄与する感覚を持った哲学者でもあったと思います。
あらすじ
『星の王子様』で著名な著者・サン=テグジュペリの本業は、パイロットです。
航空技術が今ほど発展していなかった時代に、彼がパイロットとしてどう命を懸けたのか。それが生々しく描かれる人間讃歌です。
時に砂漠に不時着し、時に真っ暗闇の中で天と地の区別がつかなくなったり、幾多の苦難に苛まれながらも、パイロットとしての矜持を持って砂漠を愛し続けた著者。
『人間の大地』というテーマが、本書の本質を的確に指し示していると思います。
彼自身にとって、パイロットとはなんだったのか。砂漠とはなんだったのか。人生とは。
ぜひ、考えながら読んでみてください。
感想
パイロットである筆者が、砂漠での遭難や友人とのエピソードなどを通して、人間とは何か、という本質的かつ抽象的なテーマについての人生哲学を連ねる作品です。
作者の代表作『星の王子様』に通ずる部分がありつつ、牧歌的な要素の少ない作品という印象を受けました。
具体的なエピソードと抽象的な作者の哲学が織り成す作品で、決して読みやすいわけではないものの、読んでよかったと感じます。
自分の職業を「生業」として捉え、職分を全うする中で遭遇するできごとを抽象化し自分の哲学につなげる。そんな態度が見えます。
“Calling”、”Beruf”ですね。
到底生きて帰れそうにない状況に何度も陥った筆者が、決してあきらめずに生還したということの本質はなんだったのかということを考えさせられます。
有名な名言「愛するということは、おたがいに顔を見合うことではなくて、いっしょに同じ方向を見ること」
この言葉、聞いたことはあっても、出典が本書『人間の土地』であるということはご存知なかった方が多いのでは?
『人間の土地』というタイトルは、人類の発展に対して種を蒔く、つまり彼自身が職業に従事し貢献する、という意味なのではないでしょうか。
時間をおいて、また丁寧に読み直したい一冊です。
『人間の土地』と宮崎駿の関係
新潮文庫の『人間の土地』は、宮崎駿監督による装丁です。
そして、新潮文庫の解説も彼によるものです。
「空のいけにえ」と題した解説のなかで、監督は飛行機の発展の「凶暴」すぎる歴史、飛行機と戦争について述べられています。
ジブリの『風立ちぬ』でも飛行機の歴史を綴っていますね。
『人間の土地』と伊坂幸太郎『砂漠』の関係
僕は、本作を伊坂幸太郎先生の『砂漠』という作品の中で知りました。
登場人物の熱血漢、西嶋という大学生が本書にえらく傾倒しており、彼がサン=テグジュペリの人生哲学に感銘を受けている様子がわかります。
小説『砂漠』には、文字通り「砂漠」を連想させるセリフが多く出てきますが、『人間の土地』のなかで印象的なエピソードと言えば、サハラ砂漠に不時着した筆者が3日間彷徨ったという話です。
伊坂作品の『砂漠』は、『人間の土地』を強く意識して書かれた作品と言えるでしょう。
サン=テグジュペリに心奪われた大学生の生き様もぜひ、併せてチェックしてみてください。
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