【感想・解説】旅のラゴス|筒井康隆|旅する男の目的と宿命。【書評】

レビュー
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こんにちは。文系学生のLinです。

今回紹介する『旅のラゴス』は、実は以前『アルケミスト』の紹介記事を書いたときにもちょっと出てきました。

『旅のラゴス』は筒井康隆氏の傑作の一つで、新潮文庫の100冊にも度々選ばれています。

僕自身、筒井康隆の小説をたくさん読み漁ってきましたが、本作は中でもかなり好きな作品ですし、筒井ファン以外にもオススメしやすい作品でもあります。

それでは、あらすじです。

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あらすじ

昔地球から移り住んできた人類と、彼らの移住先の惑星での物語。

そして、相方のスカシウマという動物を引き連れ、超能力を使いこなす人々の中で、町から町へ旅を続ける男・ラゴス。

彼は何のために旅を続けるのでしょうか。

直接記述があるのは、この惑星にある、祖先の地球人たちが遺した膨大な書物を読むための旅、ということです。

ただ、本作で言う「旅」はそのまま「人生」を表しているようです。ラゴスは人生を通じて旅をし、道中奴隷になったり持て囃されたり、様々な境地を経験しながら旅と共に老いていきます。

やがて旅を終え、故郷の村に戻ったラゴスでしたが、若いときに恋をした女性・デーデに会うために、再び旅に赴くのでした。

何のために旅をしているのか。

そのさらなる答えは、前述の『アルケミスト』がとても参考になると思うので、『旅のラゴス』が気に入った方はぜひ『アルケミスト』も手にとってみてください。

ただ、本書の中に直接の記述はありません。

【本・意味】アルケミスト~夢を旅した少年~を考察【書評・要約】

感想・考察

ラゴスにとって旅とは人生で、自分を変化させるため、思索を巡らすため、多くのことを経験し、成長するために旅をするのだと感じました。

デーデなど、途中で数人の女性に出会い、ここで余生を送っても良いかな、という状況に置かれても、それでも旅を続けることにこだわるラゴス。

途中蛮族の奴隷になったり、相方のスカシウマが殺されても、極端にラゴスの心理描写が少なく、そのため波乱万丈の物語にも関わらず淡々と進んでいく印象です。

驚いたのが、途中までデーデとの再会を目指してor書物を探して旅を続けていたかに思われたラゴスですが、彼はデーデとの再会を果たしたのち、再び旅路につきました。つまり、旅をすること、それ自体が目的化していたのかもしれません。この辺りは個々人で推測するしかありません。

つまり、ラゴスの旅の目的が直接本書の中で言及されていない。この辺りで、好き嫌いが分かれるかもです。

ただ、個人的にはとても好きですし、近年急激に売り上げを伸ばしている本作です。

筒井作品の真骨頂といっても過言ではないので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

関連のオススメ本

基本的に筒井康隆氏はSF作家ですが、(星新一『ボッコちゃん』の解説を書いたりしています) 本作にもSF的な要素がそれなりに反映されています。

『ボッコちゃん』は今度紹介します。

 

日常から非日常へ、の境目が曖昧になっている小説は良いですね。非常に写実的な作品も好きですが、小説という枠組みならではのストーリー展開を演出することが可能です。

メタファーも十分に施してあり、旅の途中で考えながら読むのにオススメです。

さて、ラゴスがそもそも旅を始めた目的というのが、いわば自分のルーツを探すためであるわけです。

その「ルーツ探し」って、知的好奇心の高い皆さんも自然とやっていると思います。

例えば、自分のルーツは何県、あるいはどこの国なのか。とか。

もっとロングスパンでいうと、人類はどこからやってきたのか、どんな進化を経て今の人類があるのか、とか。

そして悠久の歴史を知ることで、これから人類はどう進化を経ていくのか、ということを考察する参考材料にもある程度はなるでしょう。

それを知るために旅をする。

まさに、「人生」のメタファーでしょう。

いくつになっても、知的好奇心を忘れずにいたいものです。

そして、本作は自分にそれを喚起してくれる重要な作品になりました。手元に置いておきたい1冊です。

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