久しぶりにまとまった時間を取ることができたので、リーンスタートアップについて実践レベルまで掘り下げ、すぐに使える知識として解説してくれている書籍「Running Lean ―実践リーンスタートアップ」を改めて読み返していました。
リーンスタートアップの関連本は、エリック・リース著の「リーン・スタートアップ」が有名ですが、408ページとかなりのボリュームなので読み切るのにかなり労力がかかります。それに対して、本書は237ページと普通のビジネス書と同程度の厚さで、かつ小見出しも適切に振られており読みやすいです。また、「実践」とついているだけあって、豊富な事例とともにすぐに実践できるように配慮して編集されています。
本書を通じて様々なケーススタディを見ていくことで、これまでは概念的な理解だったリーンスタートアップという手法が、「実践できそう」という印象に変わりました。
※ps:これまでに、新規事業立ち上げやサービスづくりについて記事をまとめています。よろしければこちらもご覧ください。
優れたサービスをつくる方法
「Running Lean ―実践リーンスタートアップ」について
まず、本書「Running Lean ―実践リーンスタートアップ」について、さらっと紹介します。
本書は、MVPを構築する方法、構築・計測・学習のループを高速に回す方法、PMFを達成する方法など、リーンスタートアップの範囲をほぼ網羅しつつ、事例付きで解説してくれている良書です。ネット記事などでリーンスタートアップの手法はよく目にしますが、事例つきで解説してくれている記事や本はあまりありません。しかし、冒頭でも述べたとおり本書では実際の適用例や、ケーススタディが詳しく掲載されているため、より実践に活かしやすい本だと思います。
現在の自分は新規事業立ち上げにおける、初期プロダクトとしてMVPをリリースをした直後のフェーズにいるため、MVPのポイント〜計測のポイント〜初期トラクションの完了あたりまでを深く再読しました。今回は、そのあたりを中心に要点をまとめていきたいと思います。
「リーンスタートアップという概念は理解できたけど、業務に適用できていない」
そんな方がいましたら、ぜひ本書を手にとって読んでみて下さい^^
書評・感想
本記事では、この書籍の内容で、特に自分にとって気づきを得られた部分を引用しつつ、書評・感想を記載していきたいと思います。前述の通り、現在自分が担当している事業では、初期プロダクトとしてMVPをリリースをした直後のフェーズにいるため、そのあたり〜少し先あたりのポイントに絞ってまとめました。
MVPのポイント
MVP(Minimum Viable Product=顧客に価値を提供できる最小限の製品)のポイントは主に以下です。ここは割と当たり前というか、基本中の基本だと思います。
1.白紙から始め、機能を追加する毎に正当性を検討する
どんな機能を追加する時でも、「その機能はなぜ必要なのか?」「その機能で誰のどんな課題を解決できるのか?」を検討する必要があります。
2.最上位の課題(コア課題)の解決から着手する
MVPに何を実装して、何を実装しないか?の判断に迷うことがあるとおもいます。
その際の判断基準としては、「何が顧客にとって最も課題なのか?(何を一番解決してほしいのか)」というコア課題から考えます。
3.「あれば嬉しい」「必要ない」機能は含めない
機能をブレストしたり、顧客にソリューションインタビューをしていくと、「絶対に欲しい機能」「あれば嬉しい機能」「必要ない機能」が見えてきます。機能一覧に対して、それぞれ上記3つのラベルを付与していきます。
そして、
・あれば嬉しい機能は、プロダクトバックログへ
・必要ない機能は、削除する
といった形で優先度をつけていきます。
4.最適化よりも「学習」にフォーカスする
初期フェーズにおいては、スピードが重要なので、サーバー・コード・データベースなどの最適化はあとでOKです。
スケーリングの問題は最初は発生しない可能性のほうが高いためです。もし発生したとしても、その際はサーバーを増強するなどして対処すればOKです。
5.UVPをできるだけ早く体験してもらう
UVP(独自の価値提案)を顧客になるべく早く体験してもらうことに注力します。
機能を多くしすぎると、UVPが薄まってしまうため、そのあたりも注意が必要となります。
計測のポイント
初期プロダクトをローンチしたあとの計測のポイントは以下です。
1.行動につながる指標を定義する
観察結果を具体的で反復可能な行動につなげる指標を設定すること。3つのしやすさ(行動しやすさ、わかりやすさ、チェックしやすさ)が重要です。
PV数、ダウンロード数などは「虚栄の指標」です。これらはプロダクトの現状を示しますが、「どうすれば目的を達成できるのか」「次に何をすれば良いのか」などの行動につながりません。
2.単純なファネルレポートはあまり意味がない
ランディングページのコンバージョンのようなミクロレベルの分析にはファネルレポートは適しています。
ただし、(ARRRRなどの)顧客ライフサイクルのようなマクロレベルの分析には適していないです。
3.ファネルをコホートと結びつけると良い
単なるファネルレポートはあまり意味がありませんが、コホート分析と組み合わせると威力を発揮します。トラフィックの変動に対応、進捗の計測が可能、ファネルの分割ができます。
4.コンバージョンダッシュボードを作る
詳しい作り方は、本書を参照してください。
初期のトラクション達成のための運用プロセス
最後に、初期プロダクトをローンチしたあとに、いかにして運用するのか?についてまとめます。
1.コンバージョンダッシュボードを毎週レビューする
先程作成したコンバージョンダッシュボードを毎週月曜日にチーム全体で確認します。ここで、どこに改善が必要か?を特定します。
2.目標とバックログの優先順位をつける
バックログを確認し、新機能の追加と既存機能の改善に優先順位をつけます。
3.機能を追加/削除する
機能がプラスの効果を持っているかを確認し、効果が見受けられなければ改良するか削除します。
4.価値指標を監視する
定着率の週次コホートを見て、前週よりも定着率が上昇しているかを確認します。
また、ユーザーの40%が定着していたら、初期のトラクションを達成し、PMFを達成したとみなします。
さいごに
以上で、「Running Lean ―実践リーンスタートアップ」の書評・要約・感想記事は終わりとなりますが、いかがでしたか?
「リーンスタートアップという概念は理解できたけど、業務に適用できていない」
そんな方がいましたら、ぜひ本書を手にとって読んでみて下さい^^
合わせて、新規事業やサービスづくりにおいて参考になった本も以下に紹介いたします。