【あらすじ・感想】女のいない男たち|村上春樹|映画『ドライブ・マイ・カー』の原作

レビュー
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様々な事情で身近な女性を失う男性たちを描いた短編集です。

妻の不倫を知りながら咎めることなく死別した俳優と無愛想な女性ドライバーの交流を描く『ドライブ・マイ・カー』、

ビートルズのイエスタデイを関西弁訳した友人の幼馴染と形式的に付き合うことになった男『イエスタデイ』、

52歳にして初めて一人の女性を愛するあまり死に陥った医師の物語『独立器官』、

空き巣に入ることに快感を感じてしまった主婦『シェエラザード』、

妻との別居中にバーを開店し、やがて自分が何か不思議な流れの中にいることを悟る男性『木野』、

『女のいない男たち』の6編です。

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詳しいあらすじ

以下、ネタバレ含みます。

ドライブ・マイ・カー

俳優夫妻。

夫の家福は個性派の俳優で、妻は正統派美人女優でした。

妻が世を去る前、複数の俳優と関係を結んでいることを知りながら、家福はそれを問いただすことをせず、どこか淡々としています。

それどころか、最後に彼女と関係を持った男と知っていながら近づき友達になり、電話番号交換してまた会う連絡を取り付けました。

そんな家福は、以前の交通事故が原因で車の運転ができなくなっていたので、ドライバーを雇います。

人と同じ空間にいながら沈黙を味わうことが苦にならないタイプの家福が選んだのは、あまり魅力的とは言えない無愛想な女性ドライバーでした。

イエスタデイ

谷村の知る限り、ビートルズのイエスタデイに関西弁の訳を当てたのは木樽という男が初めてでした。

谷村と木樽は大学の近くの喫茶店のアルバイトで同僚になり、関西出身で標準語を話す谷村と関東出身なのに完璧な関西弁を話す木樽は打ち解けました。

そんな時、木樽は彼の幼馴染の女性を谷村に紹介し、彼らに交際するよう迫ります。

木樽の意図が飲み込み切れないままデートをした2人は男女としての進展はなかったものの、木樽についての考察を深めあう仲になります。

やがて木樽が失踪すると2人も連絡を取らなくなりました。

独立器官

谷村はジムで渡会医師と知り合いました。

渡会は美容外科の医師で裕福だし、イケメンではないけれど清潔感があって魅力的な男性でした。

そんな彼がある一人の女性に激しく恋をし、かなり不思議な展開を迎えます。

そんな渡会の変容を谷村の視点から描きます。

シェエラザード

ある主婦が主人公とのピロートークとして不思議な話を聞かせてくれます。

『千夜一夜物語』の王妃からもじって彼女を作中で「シェエラザード」と呼びますが、彼女は高校生の時に好きだった同級生の家に空き巣を働き、その快感にとりつかれました。

物を盗むために入るのではなく、彼の雰囲気を感じ取るために忍び込んだり、結果的に彼の私物を盗んだりとかなり(変態的な趣向)を呈していたこと、彼女の前世がやつめうなぎだったこととの関係などのエピソードを通じて、物語は混沌としていきます。

木野

妻の不倫現場をたまたま目撃してしまった木野は、転々としつつ伯母の店を改装してバーを開店しました。

彼のバーに来た最初の客は、ネコ。

やがてそのネコにつられるように常連客が増えてきて、木野は客のうちの一人と関係を持ちました。

彼氏からDVを受けていたらしい彼女、木野の伯母、神田と書いてカミタと読むボクサー然とした男、ネコ、そして突然現れるようになったヘビなど、短編の中で様々な不可思議な者たちが混合し、静かな物語は急展開していきます。

女のいない男たち

この短編集を総括するかのような表題作。

昔付き合っていた女性の夫から、彼女の訃報を伝える電話がかかってきた主人公。

彼の人生の中でそういった女性を惹きつけている何かがあることを自覚しつつ、彼女が天国で好きだった音楽に包まれているといい、と思いを致す作品です。

感想

ニワカ・ハルキストの私でも純粋に物語として面白がれる作品でした。

ニワカ・ハルキストではなくなるために、今後もたくさんハルキの作品を読んでいこうと思います。

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